少し湿度の高い初夏の風が気持ちいい。



久々に乗った愛車も調子が良いようだ。



信号待ちで右京は後ろに乗っている忍を振り返った。



「帰り何時?迎えに行ってやるよ。」



「何時になるか判んないからいいよ!また待ちくたびれちゃうよ?」



「いいよ。俺が待ちたいんだから。」



ヘルメットの奥で微かにグリーンの瞳を細められたのが判る。



・・・言い出したら聞かないか・・・



駅に到着し、忍はヘルメットを脱ぐと「ありがとう!」と右京に背を向けた。



「おい!忘れてるぞ!!」



「えっ!?」



忍は自分の手元に視線を落としてから右京を見て首を傾げた。



ちょっと悪戯に笑った彼の意図に気付いて忍は恥ずかしそうに苦笑した。



「・・・ああ、そっちか・・・」



そして右京に近付きキョロキョロと辺りを見渡してから少し背伸びをして軽くキスをした。



「・・・いってきます。」



「いってらっしゃい。」



ちょっとくすぐったいけど、こんな風に一日をスタートさせるのも悪くないと忍は思った。