右京が帰国して3日目。



その日、黒崎家は朝から罵声が飛び交う。



「聞いてないぞ!!お、お父さん聞いてないからな!!」




明日から泊まりで二人で甲信越地方に行くと言っただけでこの有り様だ。



「…だから、今言ってるじゃない…」



「別にいーじゃねぇかよ!たかが一泊だろ!?」



「お、…お前らフシダラだぞ!!」



朝食の席で涙目の父に、忍は溜め息を着いた。



言わせておけばいいものを右京が食って掛かるものだから、父は更にヒートアップする。



「だいたい、俺はまだお前達を認めた訳じゃないからな!?」



「なっ!?…昨日飲んでる時は“忍を頼む”って言ってたじゃねーか!!」



「えっ!?…そうなの?」



てっきりまだ和解出来てないと思ってたけど…



昨日は仕事から帰って来た時には父は既に酔い潰れていた為、そんな話初耳である。



だが、父は「言ってない、嘘をつくな」と必死だ。



「…あなた、言ってたじゃない…」



「確かに言ってた!」



「…朝から喧しいのぉ…」



祖父である師範はこの二人の喧嘩が始まると決まって“我関せず”と、だんまりを決め込む。