それは先日ニュース番組のワンコーナーで特集されていたものだった。
都心からそう遠くない雑木林の木の幹に最近出来たような無数の傷があり、それがかなりの広範囲だった事を“不可思議な傷”として報道していた。
「さっき検索してみたら、同じようなのが国内のあちこちにあった。」
「珍しい事じゃないのかな…」
「いや、普通なら考えられないだろ。」
だが、普通なら考えられない事が頻発しているのも事実。
忍も気になり出し、う~んと首を捻った。
「例えば…“かまいたち”みたいなものとか…?」
「なるほど…忍、冴えてるね~」
“かまいたち”なら日本の妖怪として有名だ。
特に甲信越地方にそれの伝承は多く、今回の怪奇現象とも符合する。
「決まりだな…甲信越地方に行ってみよう。」
右京の言葉に忍も頷き、それから二人で伝承を入念に調べた。
お陰で忍が肝心な事を聞きそびれたのに気付いたのは、かなり後になってからだった。