それから、除消は、わたしが消した人たちの「影響力」を、だらだら、だらだらと、話し続けた。


ガリ勉君。

彼が毎日、登下校の際に通る道には、年配の女性が必ず立っていた。

ガリ勉君は、女性に、いつもあいさつをしていた。女性は、彼のあいさつを楽しみにしていた。

女性は、息子の嫁とそりが合わず、息子にも助けてもらえず、家に居場所がなかった。だから、ガリ勉君のあいさつに救われていた。

ガリ勉君が消えて、楽しみがなくなった女性は、家を出て行った。

責任を感じた息子は、妻と疎遠になり、その家庭は崩壊した。


態度の悪いファーストフード店の店員。

彼女は、事故に遭って体が不自由になった両親を、バイトで支えようとしていた。

彼女が消えて、生活苦に陥ったその二人は、生活保護だけでは食べていけず、衰弱死した。


コンビニの前であぐらを掻いていた連中。

その中の一人は、会社員だった。たまたま、昔の仲間と鉢合わせして、学生時代の気分を味わいたくなって、コンビニの前であぐらを掻いていた。

会社員は、有名大学を出ていて、就職した会社では、色々な仕事を任されていた。

その男が消えた。その男が抱えていた仕事が消えた。

それが遠因となって、会社が傾き始めた。リストラが始まった。取引相手のうち、力の弱い、自分達よりも格下の会社とは、手を切っていった。

その切られた会社の一つに、わたしの父親の勤め先が含まれていた。

大口の取引先が消えて、父親の会社でもリストラが始まって、そして、クビになった。

「パパがクビになったのは、わたしの、せい……?」

信じられなかった。信じたくなかった。信じられるはずがなかった。

わたしが、ケータイをカチカチいじりながら消した連中が、そんな影響力を持っていたなんて。