学校が閉鎖になった。

町中の、いたるところで暴動が始まったからだ。

空腹に耐えかね、渇きに耐えかね、パニックに陥り、理性を失って、ケダモノと化した町の人たち。

数少ない水や食料を巡って、奪い合い、殺しあった。

今の、この状況は、一体なんなんだろう。

何が起こったのか解らない。何が原因がなのか解らない。

そもそも、お腹が空きすぎて、頭が、脳みそが働かない。栄養素が足りなすぎる。

父親の用意した朝食は、非常食の乾パンに、醤油をたらして味付けをしたものだった。

昨日、夕飯に乾パンを出したとき、弟が、不味い、不味い、と言って泣き出したので、たぶん、工夫したんだと思う。


それでもやっぱり不味かった。


わたしは外に出た。

危ないから家にいろと父親に言われたけれど、じっとしていてもしょうがなかった。

除消。

最近、姿をみせない。どこにいるのか分からない。

わたしに憑いているんじゃなかったの?

てっきり、わたしから離れないものだと思っていたのに。簡単にどっか行ってしまう。

こんな大事な時に。


……、まさか。

もう、上界へ帰った?咎送りが終わった?

でも、そんな、なんの挨拶も無しに?

考えても考えても、結論なんて出やしなかった。


……、おなか、すいた。


わたしの足は、いつの間にか、学校へ向かって進んでいた。

別に教員だか生徒だかに会いたいんじゃない。

もしかしたら、なにか、給食とか、とにかく食べ物があるかもしれない。

あるいは、飲み物があるかもしれない。

常識的に考えれば、こんな非常時に、学校が無事であるはずがない。

食べ物や飲み物があっても、すでに誰かが持ち去ってしまっているはず。

それでも、わたしは、ゆらゆら、学校へ向かった。