「騒ギニナンカ、ナラネエサ」

わたしの心を、見透かしている除消。

「ココニ店ガアッタトイウ事実ヲ消シタ。今ハモウ、『辻褄アワセ』ガ起コッタカラ、誰モ気ヅキハシネエサ。店ガ消エタナンテナ」

辻褄あわせ?

「ハジメカラ無カッタコトニスルノサ。関ワル人間ドモノ記憶ニ影響ヲ与エ、アノ店ハ存在シナカッタ、ト辻褄ヲアワセルンダヨ」


たとえば、あの店で買い物をしていたお客さんたちには、別の記憶が刷り込まれ、買い物のことは忘れてしまう。

たとえば、この町の人たちは、店があったという記憶は消され、何事もなかったかのように、日々の生活を送る。

除消の力でなにかを消しても、それ以外のモノには極力影響を与えないよう、辻褄合わせが起こる。

それは、わたしにとって、あまりにも都合のいい、そして魅力的な話だった。


「……どうしてこうも、神様っていうのは、なんでもあり、なの?」

「ソリャ、神様ダカラ、ダロ?」

しれっ、と言ってのける除消を見て。

わたしは困笑してしまった。

「ダガ、大キスギル辻褄アワセガ起コルホド消シテシマウノハ、咎ニアタル。オマエガ俺ニ何カヲ消サセルタビニ、オマエノ咎ハ積ミ重ネラレテイクンダゼ」

「そうやって、除消の咎送りが進んでいくんでしょ?」

わたしも負けじと、しれっ、と言ってやった。

覚悟はもうできている。わたしは、この力を使って、現実の地獄を消してみせる。


……そして。


「除消、あそこのパチンコ屋を消して。音、うるさすぎ」

ごしごしごし。

「除消、このアイスクリーム屋さん消して。ここのアイス、おいしくない」

ごしごしごし。

「ここの路上駐車ひどすぎだね。この一帯に停まっている自動車、全部消しちゃって」

ごしごしごし。ごしごしごし。ごしごしごし。