「……本当に、神様、なの?」

「疑リ深エ奴ダナ。テカ、黙ッテ俺ノ話ヲ聞ケッテ言ッテンダロ」

除消の訴えを無視して、わたしは嘆願した。

「だったら、東海地震を起こして」

「……、ハ?」

除消が狐に摘まれたような顔をしている(こんな不気味なのを摘もうなんて狐は、いないと思うけど)。

「神様なんでしょ、お願い。大地震を起こして、この町を、滅茶苦茶にして」

それは、いつも願っていたことだった。

大災害が起きれば、学校なんて無くなるのに。大嫌いな人たちがみんな死んで、大嫌いなこの町が滅茶苦茶になって、わたしも死んで。

わたしにとってそれは、とても魅力的な話に思えた。

何もかもが消えて無くなってしまえば、こんなに苦しむ事も無いのに。

いくら望んでも、祈っても、その願いを誰も叶えてはくれない。

でも、今は違う。目の前に、神様がいるんだから。

「……オマエ、病ンデンナ、相当ニ。クキャキャキャキャ」

顔を歪め、気味の悪い声で笑う除消。背筋が寒くはなったが、不思議と、今まで感じていた恐怖は、薄らいでいた。

神様だろうが仏様だろうが、悪魔だろうが。わたしの願いを叶えてくれれば、もうなんでもよかった。

「何デ俺ガ、人間ノ願イヲ聞イテヤラナキャナラネンダヨ。何ノ得ニモナラネエジャネエカ」

呆れたように除消は続ける。

「信仰心ヲ、ヒケラカスカ?崇メ奉ッテリャ、救ワレルッテカ?ホント、オ気楽ダナ、人間ハヨ」

「……ごめん。今まで一度たりとも、神様を崇めたこと、無い」

もし、神様が本当にいて。願いを叶えてくれるのなら。わたしみたいな不幸な人間なんて、いるはずがない。

神様が居ようが居まいが、わたしを助けてくれないのなら、そんな存在、どうでもよかった。

正直に打ち明けたわたしをまじまじと見つめ、除消は尚、声を上げて笑った。

「クキャキャ!俺ニ何モ与エネエノニ、テメエハ得タイッテカ。気ニ入ッタゼ、小娘」

お腹を抱え、苦しそうな、それでいて愉快そうな除消を見ていると。

ふと、不安になってきた。