「罪、ノコトダ。……八百万(やおよろず)ノ神ッテノハ?聞イタコトアルカ?」

あ、それは知っている。

八百万の神。昔の人たちにとって「八百万」は、「数え切れないくらいたくさん」という意味で、森羅万象、この世のあらゆるモノ、現象が「神」として崇められていた。

地震、雷といった自然現象。山や森や海や川。自然界にいきづく動植物。

除消が言うには、たくさんいる神様たちは、それぞれがそれぞれの役目を負っていて、絶妙なバランスを保ちつつ、この自然界を成り立てているらしい。

光と影があるように。食うものと食われるものがあるように。支配者と従属者がいるように。生と死があるように。

物事は全て対極を成し、生産と消費、創造と破壊、誕生と絶滅を繰り返していく。

それらのパワーバランス、均衡を維持しているのが、八百万の神。

人間の急激な文明発達により、自然界の秩序が乱されているとよく聞くけれど。

人間もまた自然の一部で。神々の掌の上で転がされているだけで。

ちっぽけな人間の微々たる存在なんて、何の問題にもなっていない。

除消は、なかなか丁寧に、でもかなり偉そうに、少し、ふんぞり返りながら。

わたしに自然界の成り立ちを教えてくれた。

「デ、咎負イハ、自身ノ役目ヲ果タサネエ神ガ受ケル『報イ』ダ。咎負イヲ受ケタ神ハ下界ニ落トサレ、咎送リ……、罪ノ償イ、ヲシナイ限リ、上界ヘハ戻レネエ」

はあぁ。

大きなため息をついて。ガックリと肩を落として。あらかさまに意気消沈して。

そんな除消の姿を見ていると。所々で、わかりやすいというか、器が小さそうな素振りを見せられると。

どうしても拭いきれない、一つの疑惑が浮かび上がってきた。