そうだ。
私…あの男にナイフで…
切り付けられたんだ…
何が何だか分からないまま、響の元へ走ったんだ。
考えもせず、ただ本能みたいなままに…
響の傍へ…
響は驚きと苦しそうで涙しそうな顔で私を見てた…
響は大丈夫みたいで…
響じゃなくて私でよかった…
そして…
記憶はそこからなくて…
今、響の部屋なんだ。
響はベッドに横たわる私の手を強く握って、
両手で強く強く握って、
「沙来…俺……沙来、沙来っ…っっうぅ、…ごめんっ…」
ただ俯いて
ただ謝って
ただ泣いて
私と響の握り合った手は
響の涙で
濡れていた…
そして私の頬に一粒そっと伝って流れていった…