全身の血の気が引いた……


真っ暗の中に沙来だけがはっきりと見えている。


誰よりも愛しい人が目の前にいる…


その沙来の上腕から手首へと流れ出てるモノは地面を少しずつ赤く染めていった…




「…ひ、ひびき…、だい…じょうぶ…?」



こんな状況で


そんな状態で


俺の沙来は小さな声で絞り出すかのようにそう言って


俺の心配をした。





そしてゆっくりと目を閉じていき、フラっと倒れ…



「っっ沙来っー!!!」



俺の抱える腕のなかで完全に気を失っていた…


俺はただ名前を繰り返し呼ぶだけ…




その男は意外な沙来の登場とざわつく周りの異変に驚きながらとっさに逃げるように去って行った。




「ちょっと、追いかけよっっ!私、写メ撮ったし!追いつかなければ警察だよ!ほらっ!!響先輩、沙来頼んだよ!!!」


そう言ったのは沙来の友達だった。

そして矢崎の腕を引っ張って追いかけていった…



残された俺と沙来…



俺はまだドクンドクン止まらない細い腕をしっかり押さえながら、ただ沙来の顔を見つめて計り知れない後悔に苛まれていた。




公園はとても静かだった…