心臓が止まるかと思った。
―――『でも私ね、すっごいの見ちゃったんだよね』
―――『…なんかね、斎藤先輩と生嶋くんがそ の女の子を取り合ってたの』
そうだ。そうだった。
水瀬さん、あの場を見てるんだった。
嫌な汗が背中を流れるのが分かる。
「……やっぱり。あの時見たの…凛ちゃん……だよね?」
「…あ、えっと…」
……どうしようっ!
バレてる。バレてるよね?
「あ、いや…あれは―――」
「ほらー、席着け~」
良いタイミングで、教室に入ってきたのは担任。
皆が続々と席に戻る中、水瀬さんも諦めて自分の席へと戻っていった。