しかし困った。いつもなら、張り倒すのも簡単にできるけど、今のこの状況。
公共の場で喧嘩するわけにもいかないし、今は特服姿でもない。
私は腕を掴まれたまま、男達の後について歩き始めた。
でも、歩けなかった。
いつかの祭りのように、もう片方の手を掴まれたから。
「―――その手、離せよ」
それは低く、威嚇するような声だった。
声の主に睨まれているのか、男達の顔が引きつる。
聞き慣れたその声が嬉しくて、私は無意識のうちに頬を緩ませていた。
「……ってことで、離してくれますか?」
私が満面の笑みを見せると、男達はあっさりと腕を解放してくれた。
ぶつぶつ文句を言いながら去っていく男達を背に、私はその人物に向き合った。
でも、私が見上げる間もなく、私は抱き締められていた。