「あの人ね……婚約者らしいよ、和弥の」




私の言葉に、夏帆が私の方を向いた。


最後の方は消え入りそうな声でしか言えなかったけど、ちゃんと夏帆には聞こえたみたい。




「もう、涙枯れるんじゃないのってくらい泣いたし」


「凛……」


「二人を目の当たりにして、ちゃんと実感した」


「………」


「ちょ…夏帆。なんで夏帆が泣きそうになってんの!?」


「泣いてない!」


「とにかく、私は大丈夫だから…ね!」




今度は私が夏帆を引っ張り上げて、にっこりと笑った。


夏帆は少し困ったような表情を見せて、ゆっくりと歩き出した。




「あのさ、一回シメていい?和弥先輩」


「……一応、辞めといて」