「ついてないなぁ・・・」
思わず溜息をすれば、白い煙となって溶けていく。
温水に切り替え、再びシャワーを浴びはじめる。
私は、この時間が一番好きだった。
降って来る水が自分を洗い流してくれるような気がして、ずっと浴びていたくなる。
身体を泡で包み込み、それを洗い流して私はシャワー室を出た。

洋服ダンスにかけられた制服に袖を通す。
クリーニングから返ってきたばかりのそれは、新品のようにパリッとしていた。きっと母が、知らぬ間に気を効かせてくれたんだろうなとぼんやり考える。
そんな好意にも何も感じない自分は、親不孝者かもしれない。

用意された朝食を手早く済ませ、鞄を手に取る。
これまた綺麗に磨かれたローファーを履く。
「行ってきます」
返ってくる返事はない。
ドアを開け、外に出れば、新たな日常が始まる・・・。