今までのほんのり甘い気分を見事に台無しにする人物が現れた。

あたしは「はぁ…」とわざとらしく大きなため息をつくと、出来る限りの迷惑な顔を作って。


「今日は家に帰るんじゃなかったっけ? 学年首位サン?」


露骨にイヤミを言う。

見ると制服姿、きっと何も入っていないだろう鞄も持ったままなので、いったん家に帰ってからあたしを迎えに来た、なんていう見え透いた嘘は通用しない。

遥のことが大好きな、たくさんの“カワイイ女の子”の誰かと遊んだ帰りに違いないのだ。


「はは…。俺、ここ何年もちづの笑った顔見てない気ぃするわ」

「でしょうよ」

「ねぇ、俺が近くにいるとそんなに迷惑なの? 一応“家族”なのに何気に酷くない?」

「そうでもないと思うけど」

「…」


一生懸命に話しかけてくる遥を軽くあしらい、家路を急ぐ。

さすがにちょっと扱い酷いかも…なんて思ってやらない。

これくらいじゃ遥はちっともへこたれないし、仮にそんなふうに見えたとしてもフェイクだ。

真面目に取り合えば取り合うだけこっちが損をする。