「ああ、もう…。ほんとヤダ」
あたしのピンチを救ってヒーロー気取りなのか、ご機嫌な様子で去っていく遥の背中に悪態をつく。
血の繋がりがないのだから当然なのだけれど、何から何まで出来の違う弟が、あたしは苦手だ。
容姿も、頭も、性格も…何もかもが、とうてい遥には及ばない。
10年も姉弟をやっているのだからお互いに少しくらい似たところがあっても不思議じゃないのに。
「…はぁっ!」
もう一度、強めにため息をつき、置きっぱなしになっている鞄を取りに教室へ向かう。
いつまでも体育館裏にいるわけにはいかないし、大好きな本屋のバイトだってもうすぐだ。
今日、遥が本当に家に帰ってくるかどうかは、おそらく半分の確率だと思う。
“カワイイ女の子”からお誘いがあれば間違いなくそっちに行くだろうし、勉強なんてしなくても遥は学年首位から落ちたりしない。
ただのご機嫌取りだ。
…そこが余計、腹が立つ。
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