渾身の力を込めて投げた球が
スタンドに吸い込まれ




スコアボードに入る「1」。



鳴り響くサイレン。

その瞬間俺の青春は終わった。




汗と涙が交じった滴が
グラウンドに落ちる。



たかが「1」



でもその「1」が俺を奈落の底に突き落とした。



今までの苦労努力が
「1」という大波に崩されていく。



俺の努力なんて所詮砂上の楼閣。



波間に作られた砂の城のように
ゆっくりと


とてもゆっくりと
俺の三年間は溶けてなくなっていった。


「ナイスピッチング」



その声に振り向くとそこにはマネージャー。



「嫌味か?」



ぶっきらぼうに答える俺。



「そうだよ」



そう言っていたずらっぽく笑うマネージャー。
風になびくスカートと長い髪。



「こいつ!」



怒って俺はマネージャーを追いかけまわすが
捕まらない。



やがて息を切らせ二人とも座り込む。



激しい息遣いがお互いの距離を縮めていく。
空は底抜けの青。


どこまでも続いている。