部屋の片隅に机が一つ。


その上に、紙切れが一枚置いてあった。


その紙を手にとって、見つめる。




“望月が闇を照らす前に世界を旅立つ事一つ、お許し下さい”




読めない。

でも…

百合香様が故郷の母へ書いていた手紙と同じ文字。




『取り残されたの。私は独りぼっち…』


百合香様の声が蘇った気がした。


女で一人、自分を育ててくれた病弱な母が死んだ…。


百合香様は きっと
その頃から、支えになる者も支える者も…

ココで生きる意味も…


失っていた。