もう、俺は虚ろだった。
静かにゆっくりと
鈴音を抱いて立ち上がる
そして そのまま
花月楼へと
不安定な足取りで
歩を進めた
途中で さっきの
汚らしいヒトガタの前を素通りした
ただの残骸の横を
フラリ フラリと
彷徨うように
そして 腕の中の
愛しい彼女が
冷たくなってゆくのを
知らんぷりしながら
あの場所へ…
迎えてくれたのは
変わり果てた
彼女の家族たち
至る所で
祝いの朱色に染まっていた
彼らなりの“祝福”
なのだろうか…
その中には
俺の親友二人と――
「兄さん…」
久しぶりに会った
俺の唯一の家族
兄さんも
祝いに来てくれたのか…
ありがとう