黙る事しか出来ない俺。

「? 鈴音…?」

情けない俺に、鈴音は小指を差し出した。



「“や く そ く”」


そう言って、ニコッと鈴音は笑った。


「鈴音…」


俺はその細く弱い小指に、自分の小指を絡めた。


「約束しよう。
お前が生まれ変わったら、俺はお前を必ず探し出す。
そうしたら、また
お前を愛して、永遠に守り抜く。

約束だ」


鈴音の着物の帯に刺さるあの簪が、小さく光った。



「し あ わ せ…」


鈴音は綺麗な雫を流して、目を閉じた。


鈴音の小指は、次第に力を失っていった。


「鈴音…」

綺麗な雫に触れた。

鈴音はもう、きっと瞳を開ける事はないんだ。


涙は出なかった。
本当に…
独りになってしまった。

この広い、月明かりが微かに照らすだけの世界に。