「鈴音!」

息を切らしながら戻って来ると、月明かりに照らされて倒れている鈴音がいた。


俺はそれに駆け寄って、強くも優しく抱き起こす。


「けん…たろう…?」

鈴音はゆっくりと目を開けて、弱々しい声で俺の名を呼ぶ。


「すまない… 俺…」

「ううん みて…?」


鈴音の倒れている付近の地面を見た。そこには…

「りお、もじ… かけるようになったよ…」


不格好な
“あいしてる”の文字


「けんたろう
りおを みつけてくれて
ありがとぉ…

つぎ うまれたら
またあいたいな…」


鈴音
逝かないてくれ…
俺を独りにしないでくれ…


そう伝えたい。
だけど、それでは鈴音が救われない…


俺は最後まで
無能なままなのか…