「健太郎…」

鈴音は小さな声で俺の名を呼ぶ。


医者… 医者を…


「!?」

おどおどし出した俺の着物を、鈴音が力無く握った。


「お願い… 守ってぇ…

鈴音の 大切なもの

悪い人達から…

守ってぇ…」


苦しそうに願う鈴音

どうしてこんな…


「早く… おねがい…」


花月楼で何かあったんだな。そうに違いない。


「分かった。
俺は花月楼に戻って、その足で医者を読んでくる。
それまで、ここで待っててろ」



「おねがい…」


鈴音は、苦しそうに少し笑った。


「必ず戻る」


俺は、地べたに鈴音を優しく寝かせて走り出した。


無我夢中で――