日が暮れ、俺は花月楼への道を一冊の本を片手に歩いていた。
今更ながら、照れくさくて堪らない。
「何て話しかけようか…」
――「いつも通り、本の話しでもしてやりゃいいじゃねぇか」
不意に考えていた事を口に出してしまった瞬間に、思いもよらぬところから返事が返ってきた。
「!?。居たのか、龍馬」
声の方へ振り返れば、そこには龍馬が居た。
「そんなに驚くなって。
いつものまんまで、居てやれよ」
龍馬はそう言って、俺の肩を叩いた。
「…それはそれで、難しいな」
「だな」
龍馬は笑った。その顔が何故か寂しそうだった…。