恐らく初めて会ったはずなのに、どうして私の名前を…?
有月と顔を見合わせて、またそのお客様の方を向いた。
「鈴音は、私ですが…。
何か?」
「お前が『鈴音』か」
キリッとした鋭い目で見つめられる。どことなく恐い…。
「一つ、話がある」
変な緊張感の中に、冷たい声が響く。
「金輪際、健太郎と一切関わるな」
え…
今、何て…
「どういうコト…ですか」
「意味が解らぬと言うのか。
遊女の分際で、我が仲村の息子と釣り合うとでも思ったか。
身分を弁えろ」
身分… 釣り合い…
そんなコト、始めっから知ってた。
「話はそれだけだ」