口を押さえた手に着いた、紅いモノ。
『夢を現実にしてはいけませんよ』
遠い日の昴お姉様の声。
今日、健太郎は来るのかな…?
さぁ…
始めなきゃ、今日の仕事。
それ以上何も考えないで、準備を整えて、いつも通りに玄関へ行った。
そこにはもう、有月が居た。
「おはよう!鈴音」
「おはよう、有月。
今日も頑張ろう」
「うん、頑張ろう」
二人で客待ちを始める。
健太郎、来ないかな…。
「ねぇ、鈴音。
昨日 楽しかった?」
「うん」
「何処行って来たの?」
「森の奥の丘で、月を見てきたの。
綺麗だったよ」
「すごーい!
昨日はお月様綺麗だったもんね。羨ましいな。わたしも好きなヒトと行ってみたいなぁ…」