「昴、寂しくなるが…。
これは、鈴音と病気で苦しむ人々の為なんだ。
悲しんでは、いけないよ」
動きが止まったままの昴に、主人はやんわりとそう言った。
「はい…。わかっています」
寂しそうな返事。
「片海君。
鈴音はいつ頃、そちらへ送り出そうか」
「まだ 準備は整い切れていません。
ですから、また近いうちにと思いまして…
今日はそのお話だけです」
わかりました。と、主人は答えた。
その後主人は、空いている障子の向こうを遠い目で眺めていた。
美しい夕月夜。
思いを巡らせるには、申し分ないくらいの空。
この主人は、何を想い考えているのだろう…
「いずれかはこんな日が来るのだと、薄々悟っていました…」