「やぁ、昴。
鈴音の様子見に行ったのか」
適当にそう言ったが、昴はきっと 鈴音と健太郎が出掛けるのを見送ったのだろう。俺には分かる。
「ええ、そうです。
片海先生は、こんな時間に何かご用事でも?」
「ここのご主人に会いに来たんだが…留守か?」
「いえ、いらっしゃいます。
今ならまだ、ごゆっくりなさってるはずですから…」
こちらへ どうぞ。と、昴は俺を案内してくれた。
渡り廊下を通り抜け、いつも通り奥の部屋へ進む。此処へ来るのは、何度目だろうか…。
ご主人の部屋の前へたどり着くと、「少々お待ち下さい」と昴が先に入って行った。