『お前が好きだ 愛している』
俺は鈴音を抱き寄せて、そう告げた。
鈴音は「私も…」と、答えてくれた。
俺は無意識のうちに、鈴音と唇を重ねていた。
俺はきっと、もう誰も愛せないだろう。
だから…
鈴音を離したりなんかしない。
ふわりと吹いた風に揺れる、鈴音の栗色の髪が月明かりに透けて、美しい…。
「美しい髪だ」
鈴音のさらりとした髪に触れる。
鈴音の瞳は、俺を見つめていた。
もしも あの日
あの場所を訪れなければ、今 この瞬間は存在しなかっただろう…。
「鈴音、これ――」
俺は触れていた手を離し、懐からあれを差し出した。