「素敵な場所だね」
「だろう。
春には桜が咲き、夏には星が輝き、秋には紅葉が溢れ、冬には白銀の世界に変わる…。
風流と言うヤツだ」
風流…。
「外って、美しいんだね」
「ああ」
健太郎の横顔が月明かりに照らされて、少し眩しかった。
「鈴音…」
私の手を握る健太郎の手が、微かに震えた気がした。
「…な…に?」
連鎖するように、私の声も震えた。
健太郎は真っ正面から、私を見つめた。張り詰めたような様子で…。
だから私も、じっと健太郎を見つめていた。
「鈴音…」
もう一度 名前を呼んで、そっと私を抱きしめた。