俺が家を出たあの日、俺は医者になりたいのだと、父に告げた。
もちろん
猛反発された。
お前はこの家を継ぐのだ!と、怒鳴られた。
金にばかり魅せられて汚い事ばかりのこの家を、何故俺が継がなければいけないのだ。
そう言った途端に、「出ていけ!」と言われ、その通りに出た。
そして、ずっと尊敬していた先生の元へ弟子入りし、無事に独立した。
今は、故郷の外れのこの一軒家に診療所を設けたばかりだ。
まだ 特に患者はなく、弟子として学んでいた頃助けた男の店の少女の診察が主な仕事だろう。
その少女は、今流行りの肺結核だ。