はぁ…。
再度ため息をついて、私は部屋へ戻ろうと廊下を歩いてゆく。
「見て見て!
こうでしょ?」
「違う違う。ここから書き出すんだ」
ふと、ある部屋から楽しそうな明るい声がが聞こえて、足を止めた。
「健太郎、さっきより文字が歪だよ?」
「良いんだ。字は自分にさえ解れば良いもんなんだ」
「へぇ~、そうなんだぁ」
「いや…。
ただ単に、俺の字が汚いだけだ」
「やっぱりね」
「やっぱりって言うな。事実なんだから仕方ないだろう?」
無邪気な笑い声が聞こえる。
今までに鈴音の部屋から…鈴音自身から、笑い声なんて聞こえてきたコトなんて、一度もなかったのに。