「またのお越しをお待ちしております」


常連の方を玄関で見送る。


はぁ…。



知らず知らずの内にため息をついて、部屋へ戻ろうとした時だった。



「ため息なんかついて、どうしたんだ?昴」




声を掛けられて振り返った先にいたのは…


「片海先生…」


そう、ココの主人のご友人のお医者様。

「いらっしゃいませ」

「やぁ、久しぶりだな。
ご主人はいるか?」

「いえ。
今宵はつい先程お出かけになられました」

「そうか…
それは残念だな」


この方は時たま、ココの主人を訪ねてやってくる。

確か、旅先で主人をこの方が助けて以来の付き合いだと、聞かされた気がする。