「…っはぁ……」
乱れた息を整えながら玄関を見渡す。
視界に入るのは下駄箱だけで白金はいない。
「しっ…白金…?」
小さい声で名前を呼んでみるけど応答は無い。
……1人で教室行ったのかな?
学校の記憶はあるだろうから…行けるよね。
あたしは諦めて走って来た廊下を戻ろうと足を伸ばした。
「白金くん…」
「……え?」
耳に届いた声に伸ばした足を元に戻す。
確かに聞こえた「白金」という言葉。
白金が…ここにいるの?
……それに今の声はーー…。
「怪我…大丈夫?」
「……近寄るな」
あたしは会話が聞こえる方へと静かに足を進めた。
近づく度に心臓の鼓動の速さが速くなっていくのを感じる。