4、嬉しかったんだ。

廊下を猛ダッシュ。「廊下は話さず走らずに」っていうポスターが、バサバサ。

先生に怪訝な目で見られた。無視無視。

俺…俺。声に出してみた。低めの「俺」の声は、なかなか俺という単語にフィットした。

なんだか嬉しい。嬉しさが湧き上がる。体の奥底から、じんわりと沁み出してくるのだ。

「俺」はその日から、「俺」という男になった。