まだ、表通りには僕を探し回っている女の子たちがウロウロしている。

「あ、あの…どちら様ですか?」

「しっ!静かにして!」

一瞬、息を止める。

(その声は佐奈さん?)

佐奈の声だけは間違えるはずはない。

何分間、沈黙が続いた。

「ふ~、やっと落ち着いたようね。」

「あ、あの~」

佐奈がこっちを振り向いた。

僕は佐奈を確かめたくて、彼女に顔を近づけて行った。

(ちょ、ちょっと何?
何で近づいてくるの?)

おでこがくっつきそうな距離。

(も、もしかして…
キ、キスするつもり?)

佐奈は予想外の事でかなり動揺している。

そしてゆっくりまぶたを閉じた。

………

(んん??来ない…)

「佐奈さん? どうしたんですか?
眠いんですか?」

(へェ??勘違い…うちって、つくづくアホやな…)

佐奈の期待?は見事に裏切られた。

そして、その顔が真っ赤に染まっている事を僕が気付く事はなかった。

鈍感な僕に腹を立てたのか、佐奈の態度が急に変わった。