別のポイントでチラシを配っていた佐奈。

「はぁ~、今日もこれだけか…。」

どれだけがんばっても全部配り終える事はできなかった。

「仕方ないな。明日また配ろう。」

もう何日もチラシを配っているが、なかなか効果が出ない。

(このままやったら、ホンマに店つぶれてしまうわ。)

不安な思いで店へと帰って行く。

(あれ?)

道頓堀、なぜか人が大勢、群がっている。

(一体、何やってるんやろう?有名人でもいてるんかな?)

気になった佐奈はその場所へと向かった。

凄い数の女の群れ。

「ちょっと、ごめん。」

人をかき分け、前へと進んで行く。

(あーっ!あれは、まさか?!)

佐奈の見たものは……

(ベンではない、いや、やっぱりベンや。)

その姿、海に行った時の…

メガネをかけていない。

(な、何やってんの?
ベン。アホちゃうか!)

その時、僕はもみくちゃにされて身動きが取れなくなっていた。

(あそこから、ベンを助け出すのは至難の業やな。)

佐奈はある事を考えた。

(そうや!)

行列の後ろの方に並んでいる女性たちに…

「あ!あっちの方にスワップのメンバー来てるらしいで。」

「え?!ウソ、どこどこ。」

その声は一瞬にして全体に広がって、混乱し始めた。

(よし、今のうちや。)

佐奈はすばやく一番前に出て行き、僕の腕をぐいっと引っ張ってその場を走って逃げた。

それに気付いた女の子たちも後を追いかけてくる。

佐奈にとって[ミナミ]は自分の庭のようなもんだ。

気付かれず、細い路地に入りこみ、まんまと[追っかけ]の追跡を振り払った。