店内には僕と真理亜、二人だけが残った。

真理亜のすすり泣く声だけが響いている。

だいぶ応えているだろう。

でも、今は真理亜に同情する気持ちなど、これっぽっちもない。

佐奈をあんな目に合せた張本人が真理亜だったなんて……

(ひどい、ひどすぎる!)

持っていたおしぼりから水がこぼれ落ちるくらいギュっとにぎりしめていた。

僕は我慢しきれず、真理亜の前に飛び出した。

涙でぐちゃぐちゃになった顔で目の前に立つ僕の姿をみた真理亜。

「つ、勉…くん…?!」

二重のショック…

もう隠す事も、言い訳をする事もできない。

「君って人は…」

人間として最低の事をした彼女を思いっきりにらみつけた。

「ごめん…なさい…私…ひどい事を……」

今さら謝ってももう遅い。

「何も言わなくていい。僕は、君を絶対に許さない!」

冷たい視線、今までこんな顔、誰にも見せた事がない。

「私、勉君の事が本当に好きだった…
あの子に取られるのが嫌だった。
だから…お願い、許して…」

「もう、僕の前に二度と現れないで。
顔も見たくない。」

その言葉が真理亜の胸に深く突き刺さる。

僕は哀れな彼女に同情する事なく、その場を立ち去ろうとした。