華音とさくらは顔を見合わせ驚いている。

・・・・そんな傷があるなんて知らなかった。二人の目はそう言っていた。

「どういう事ですか?カスミの体に傷って・・・そんなの知らない」

最後は悲痛な叫びになった。

反対に南川はどこまでも冷静だった。

「恐らく・・・虐待の後だと思います。今頃は警察が母親の元に向かっていると思います。父親は出張中で・・・こちらに着くのは明日の朝になるそうです」

そこまで教えても良いのだろうか?とさくらが考えていると、冷静だと思っていた南川の瞳が揺れた。

「本来なら教えてはいけないのです・・・ただ・・・あの傷は・・・」

今まで色んな虐待の子供を見たが・・・その中でも飛び出て酷かった。実の親が実の子にあそこまで残酷になれるのかと思うと、一人の人間としてやるせなかった。

「声をかけてあげて下さい。カスミさんがこちらの世界に戻ってくるよう・・・恐らく3日が山です」

南川はそう言うと去って行った。華音たちが呼ばれたのは、カスミを一人にしない為なんだと・・・その時初めて気が付いた。

もし誰もいなかったら、カスミが目を覚ました時に寂しいから。

南川が最後に教えてくれた。

華音に電話をかけたのは、着信の所にあったのともう一つ・・・華音の名前が「親友」の所に入っていたからだと。そこにはさくらと他に数人、華音たちが中学から一緒に過ごしたメンバーの名前があった・・・。

いつも笑って自分の気持ちを話さないカスミが華音たちの事を親友と思ってくれていたことは嬉しかったが、その事実を今知る事が・・・悲しかった。