華音の電話が鳴った。カスミの名前に華音は慌てて電話に出る。

「カスミ?どうだった?大丈夫?」

畳み掛けるように話し出す華音の耳に聞こえてきたのは、知らない女性の声だった。

「私D町警察署の南川と申します。赤田カスミさんのお知り合いの方でしょうか?」

警察署・・・嫌な予感がする。

「はい・・・友人の山井華音です・・・カスミに何かあったんですか?」

脈が変に早い気がする。南川は落ち着いて聞いてくださいと言うと話し出した。

「先ほど海で自殺を図り、病院の方に運ばれました。息はあるものの・・・非常に危険な状態です」

華音は最後まで南川の言葉が入ってこなかった。

カスミが自殺・・・?何で?

華音の様子に普通ではないものを感じたさくらが、華音から電話を代わる。

「はい。分かりました・・・すぐに行きます」

さくらが華音に代わり南川と話していた。さくらが南川との電話を切った後も、華音は呆然としていた。

「・・・・私が・・・武君の事を・・・言ったから・・・」

泣きだす華音にさくらは優しく話しかける。

「違うよ。かのちゃんのせいじゃない。例え今日じゃなくても・・・いつかはカスミは知ったと思う」

華音に言い聞かせるが、さくらも泣き出しそうになっている。しかし泣いている場合ではなかった。

「かのちゃん・・・病院に。家族に連絡が取れないから、もし良ければ来てほしいって・・・」

行ける?とさくらが顔を覗き込んでくる。華音は涙を拭うと、近くにあった鞄を手に取った。