華音達との電話を切ると、カスミは涙が溢れてきた。

(何で・・・何で・・・タケちゃんは裏切ったの・・・?)

武に電話をするからと切ったものの、なかなかかけれずさっきから武の名前ばかり見ている。

何度目かの溜息をはくと、カスミは震える手で武に電話をかけた。

プルル~プルルル~

コール音が虚しく響く。何度か鳴った後、武が出た。いつもと変わらない武の声が、カスミの気持ちを余計重くさせる。

「おう!どうした?」

「タケちゃん・・・今話せる?」

カスミの声が震えている事に武は気付かない。

「今は・・・ちょっと先輩と飲みにきてるんだ・・・」

嘘をついている。今までのカスミなら気付かなかったかもしれない。

けれど・・・疑っている時と言うのは、こんなにも神経を尖らせ、嘘に敏感になってしまうものなのだろうか?

「・・・本当に先輩?」

ようやく武もカスミのいつもと違う雰囲気に気が付いた。

「どういう事?」

声のトーンが下がる。

「本当に先輩?って聞いたの」

泣きそうになる気持ちを抑え、カスミは武に尋ねる。

「俺の事疑ってるの?」

疑われるような事をしているのにね・・・今まで一緒に過ごしてきた武が、突然知らない男性に見えた。

「華音ちゃん達が見たの」

自分でも大きいと思う声でカスミは武に言った。

「A町のラブホ。先輩といるんじゃないよね?」

初めて聞くカスミの大声に武は驚きを隠せなかった。武が何か馬鹿な事をしても、カスミはいつも笑って許してくれていた。

「・・・・・」

黙り込む武に、カスミはイライラが募る。

「何とか言ってよ・・・」

武だって自分が悪いと分かっている。カスミと別れるつもりなんてなく、ただ・・・

「カスミが触らせてくれないから・・・」