何も言わないカスミに、華音は言葉が続けられなくなる。

一時間程・・・言おうかどうか悩み、決意し電話をした。しかしカスミの様子に言わなければ良かったのかと後悔していた。

やはり自分が口を挟む問題ではなかたったのだ・・・。そう華音が思った時、黙っていたカスミが電話越しにでも分かるくらい声が震えながら訪ねてきた。

「華音ちゃん・・・それは本当にタケちゃん・・・だった?」

違うと思いたいカスミの気持ちが痛い程伝わってくる。

「ごめん・・・武君だった。相手の子が武って呼ぶのが聞こえたし・・・」

言いにくそうに華音が呟く。恐らく華音が見たのは武で間違いないだろう。それでも信じたくなかった・・・。

「言いにくい事言わせてごめん・・・」

悪くもないのに謝るカスミの悪い癖。それをいつも華音は叱るが、今日はさすがに言えずに黙り込む。

空気を察したカスミが、無理に作った元気な声で大丈夫だよと笑う。

「大丈夫だよ?一度電話してみる。話し合ってみるから。知らせてくれてありがとう」

そう言うと電話を切ろうとする。何故か切ってはいけないような気がした華音だったが、言葉が出てこない。

それを見かねたさくらが華音から電話を代わった。

「カスミ?さくらだけど・・・今から行こうか?」

カスミを気遣う優しい声が受話器越しに聞こえ、一瞬頷きそうになるが、今の自分の状態を見られるわけにはいかないと思い断る。

「大丈夫だよ!今からタケちゃんに電話してみるし・・・修羅場に付き合わせたくないからさ」

優しいカスミの事だ、修羅場になどなるはずはないとさくらは分かっている。しかし断るカスミに無理に行くとも言えず引き下がる。

この事をさくらは後に心から後悔する・・・。

「それじゃぁ、今日はかのちゃんとずっと一緒にいるから、なんかあったらすぐ言って?」

それでもこれだけは言っておこうとさくらが伝えると、分かったよと言ってカスミは電話を切った。