そしてカスミが回復すると、また殴る蹴るの繰り返しだった。

「・・・お母さん・・・もう止めて・・・・」

カスミが繰り返される痛みに耐えながら頼むが、母はカスミの言葉など耳に届かない。

意識がなくなる寸前、母の言葉がカスミに届く。

「あんたなんか産まなきゃ良かった。何で生きてるのよ」

そうだね・・・お母さん・・・私も何で生きているのか分からない。意識がなくなると同時にカスミの目から一粒の涙が零れた。

母は意識がなくなったカスミに関心をなくし、部屋から出て行く。




どれくらい意識がなくなっていたのか、カスミは携帯が鳴る音で目が覚めた。

ディスプレイを見れば、華音からだった。同じ大学に通う友達であり、中学からずっとおなじ学校に通う華音は、いつもみんなの中心で笑うカスミの自慢の友達だ。

痛い体を何とか起こし、カスミは電話に出た。今あったことなど・・・ばれない様に。

「もしもーし。どうした?」

いつもメールですます華音は、電話をかけてくることは滅多にない。

「あっ・・・カスミ?今って大丈夫?」

あまり聞いた事のない華音の声に、悪い知らせだ。とカスミの直感が告げている。

「大丈夫だけど・・・どうしたの?」

電話の向こうでさくらの声がしているが、何を言ってるかまでは聞こえてこない。

「あのね・・・最近武君と会ってる?」

武とはカスミの幼馴染であり、恋人でもある。

何回か華音達と一緒に遊んだことはあったが・・・いきなり華音の口から出てきた武という言葉に嫌な予感がする。

「一昨日会ったけど・・・タケちゃんがどうかした?」

聞きたくないが、続きが気になるカスミは逸る気持ちを抑え華音に訪ねる。

「武君がね・・・・女の子とラブホに入るところを・・・見たの」

言いにくそうに、言葉に詰まりながら続ける華音の言葉に、カスミは携帯を持つ手が震える。