「ごめん・・・ごめん・・・カスミ・・・ごめん」

謝り続ける武にカスミは抱き着いた。

「タケちゃんのせいじゃないよ・・・私が弱かったの」

儚げに笑うカスミに武は首を振る。

「違う・・・違うよ・・・俺が悪いんだ」

泣きながらそれしか言わない武にカスミが目を合わせる。

「タケちゃん。お互い悪かったのよ・・・だから謝るのは止めよう?私も悪かったし、タケちゃんも悪かった。ね?」

それ以上謝ったら怒るよ?とカスミは笑っている。カスミの笑顔と言葉に励まされた武も頷くと笑いかける。

「分かった。でも最後に一回だけ言わせて・・・カスミ。ごめんなさい」

なんに対して謝っているのか分かっていたが、それには触れなかった。武が彼女と別れてきたのは言葉と空気で分かる。だからそれで良いのだ・・。武が側にいてくれるのだから。

「これからはいっぱい話そう。今まで話せなかった分・・・いっぱい話そう」

そう言って笑うカスミの笑顔に影はもうなかった。


ここで生きて行こう。

辛い事もたくさんある。

泣きたくなることもたくさんある。

けれどここが私の生きる場所だ。

愛してくれる人がいるこの場所で・・・。


カスミの笑顔の横でカスミソウがいつまでも揺れていた。



             -完-