「カスミ!」

泣きながら抱き着く武と、お互い抱き合い喜ぶ華音達、そして手を握りカスミカスミと呼び続ける父が居た。

「私・・・」

生きてるんだ。手を動かす。目を開く。話す。その行動全てが生きているんだと実感できる。

カスミは開いたばかりの目で病室を見渡す。カスミの病室は花と言う花が溢れている。

「すごい・・・花だね・・・」

ポツリと呟いたカスミの言葉に華音が反応する。

「みんなが・・・みんな・・・自分の花をね?」

自分の花。カスミはカスミソウだ。

「本当にいっぱい・・・。どれにも私がいるんだね?」

嬉しそうに笑うカスミを見るだけでみんな嬉しくなる。

「そうだよ・・・カスミがいないとみんな主張が激しいんだから」

カスミソウは他の花の引き立て役。けれどその引き立て役がいないと、他の花たちは主張し過ぎてしまう。カスミソウがいるから喧嘩せずにいられるのだ。

「カスミがいないとダメなの」

さくらの言葉が嬉しかった。自分の存在を必要としてくれる。もう少し周りを見渡せば、側にはたくさんの幸せで溢れていたのかもしれない。

父がカスミに話しかけてくる。

「カスミ・・・僕と一緒に暮らそう。嫌とは言わせないよ?」

母が捕まったからだとは言わない父の優しさが嬉しかった。なかなか頷かないカスミをハラハラしつつ見守っていた時。

「うん・・・お父さんと暮らす・・・」

下を向き嬉しそうに頷いた。

空気が一気に和らいだことをみんながホッとした。

そして・・・

「タケ・・・ちゃん・・・?」

武の名を呼べば、武が不安そうにカスミを見ていた。

二人だけにしてあげようと父や華音たちが病室を出て行くのが見える。それを見送るとカスミは武に向き直った。