-バタバタ-

「カスミ・・・」

汗だくになり走ってきた武は嫌な予感がしていた。側により、脈があるかを確認してしまう。

「カスミ・・・カスミ・・・・戻ってこいよ・・・」

涙が頬を伝う。カスミの父がいる事にも気付いていなかった。

「お願いだから・・・・逝くな」





カスミの周りに光が溢れた。

「タケちゃん・・・・?タケ・・・・ちゃん・・・・?」

涙が止まらない。武が自分を呼んでいる。

「戻りたい・・・戻りたいよ・・・タケちゃんの元に戻りたい・・・」

それは今までカスミが持てなかったもの・・・生きる意志。

武が浮気をしていたことに傷つき、母の虐待に疲れ、生きる意志を無くしたカスミ。

しかし今は全て忘れて武の元に行きたかった。



「カスミ・・・カスミ・・・」

武が手を握り呼び続けていた時。

-ピクリ-

カスミの手が動いた。

「カスミ・・・カスミ・・・戻ってこい」

武の様子にいつもと違ったものを感じた華音たちが集まってくる。

「武君?」

華音の問いに武が焦ったように答える。

「カスミの様子が・・・手が動いたんだ!」

その言葉にみんなが声をかけ始める。

「カスミ!戻ってきて」

「カスミの場所はここだよ・・」

「カスミ・・・・お前に先に逝かれたら・・・僕は・・・」

それぞれが心からの叫びを叫んでいる。そしてまたカスミの手が動いた。




みんなの声がする。

私戻っても良いの・・・?


ううん。・・・戻りたい。私戻りたいよ。

そう思った時、カスミの意識は飛んでいた。

目を覚ませば、そこには・・・。