今まで黙って見ていたさくらが初めて口を開いた。

「武君・・・カスミ以外の女の子とあんなところに居たのは何で?」

カスミは華音たちと言っていた。恐らくあの場にさくらも居たのだろう。

「それは・・・」

黙りこむ武にさくらは質問を止めない。

「カスミが・・・させてくれないから?」

何をとは言わない。さくら達も今日までは不思議だった。あんなに仲の良い武とカスミが何故キス以上進まないのか。しかし・・・今日分かった。

さくらは武から目を逸らさない。反対に武はさくらの目を見る事ができない。けれど武が微かに頷くのをさくらは見逃さなかった。

-バチン-

華音は驚き動けなかった。いつだって怒り、暴走するのは華音で、さくらはそんな華音をいつも宥め止めていた。

「武君・・・・カスミは・・・」

殴られ呆然としていた武にさくらは真実を教えようか迷う。

さくらは言葉が詰まり続ける事ができなかった。そして今まで華音が見た事のないくらい取り乱し泣き出した。

ずっと張りつめていたのだと華音は気付く。自分が泣き、取り乱していた為、ここまでさくらはずっと気を張っていたのだ。自分がしっかりなければと・・・しかしその糸が切れた。

大声で泣き続けるさくらを抱きながら、華音は武を見ようとせず話し出す。

「カスミの体には・・・・傷があるそうよ・・・・」

武は華音の言葉の意味が分からなかった。

(カスミの体に傷・・・?何で・・・?)

疑問が頭を回る。武の様子など知らないと言わんばかりに華音は続ける。

「お母さんから・・・・虐待を受けていたって警察の人が・・・」

カスミの母を思う。武が行くといつも笑顔で迎え入れてくれていた。その人が・・・虐待をしていた?信じられない様に言葉を詰まらせる。

「気付かなかった・・・だけど気付けたはずなのよ・・・」

華音の言葉が胸に刺さる。・・・・気付けたはずだ。カスミの一番側にいた自分なら。

しかし自分がした事は・・・・

「俺・・・俺・・・・最低な事を・・・・」

涙が溢れてくる。


(俺の・・・せいだ・・・)