トントントントン。

カスミの耳に階段を上る音がする。

いつもの夜が始まる・・・。

-ガチャン-

「おい。起きろよ」

母の声だ。カスミは必死に寝たふりをする。こんなことをしても意味はないと分かっているのに、布団を頭まで被る。

「起きろって言ってんだろ」

布団を剥がされ、カスミは髪の毛を引っ張られ床に叩きつけられた。

「起きてたんだろ?親に返事もしないのか」

カスミは小声で「ごめんなさい。ごめんなさい」と呟く。怯えるカスミを楽しそうに母は見つめている。

「相変わらずパッとしない子だね。誰に似たのかしら?」

母と父はカスミが10歳の頃に離婚していた。父の浮気が原因だった・・。

それまで優しかった母が、それから急変した。ことあるごとにカスミを殴り、暴言をはくようになった。

見かねた父が何度かカスミを引き取ると申し出てくれたが、カスミは母を一人にはできないと断っている。

今はこんな母でも・・・いつかは・・・そう思ってしまう。

「何とか言ったらどうだい?そういう所はあいつにそっくりだ」

母がカスミを殴る時、母はいつも父の事を持ち出す。カスミに父の面影を見ているのだろう。

-ドス-

母がおなかを蹴る。何度も何度も・・・顔に傷がついたらバレるため、傷つけるのは服で隠れるところばかり。

痛みに体が麻痺し、意識が飛びそうになる。そうすると母は殴るのを一度止めるのだ。

カスミが痛みに顔を歪めるのを見るのが楽しいと言わんばかりに、カスミが少し回復するまで待つ。