思い出の、あの場所で。






 「奈緒っ!!」


葉子が奈緒を呼び止めるために叫んだ。


きっとバレた。

奈緒がいるということが隼人にバレた。


でも止まることなんて出来なかった。

これ以上二人を見ていたら、大声で泣いてしまう。

だからまだポロポロ落ちるだけの涙のうちに、その場を離れたかった。



どんっ!!


無我夢中で走っていた奈緒は誰かにぶつかってしまった。

「…あ、すみませ…」

「奈緒!!」


俊だった。

ぶつかったのではなく、俊が奈緒を止めたくて受け止めたのだ。


「しゅ、俊…?」

「お前が前から走ってくるのが見えたんだよ…って、なんで泣いてんだよっ!?;」

まさか泣いているとは思わなかった俊は、途端にあたふたしてしまう。


「お、お前、例の好きな奴と会ったんじゃないのか!?」

「…会ったけどぉ…う…うぅ…っ」

奈緒は周りなど気にせず泣き崩れてしまった。

端から見れば、どう見ても俊が泣かしているようにしか見えないので、俊はさらに焦って奈緒の肩を抱く。

そしてそのままひとまず体育館を出た。