突然の発言に俺はびっくりして目を開いた。


「聞こえなかった?あたし、ヒロとやり直したいの。ダメ?」


もう一度言われて、それが夢じゃないことを悟った。


はっきり言って俺の頭の中は混乱している。


「え…?だって比奈……君は経理部の守川と付き合ってるんじゃないのか?」


思わず言ってしまって、はっとなった。


慌てて口を噤んだが、比奈は気にしていない様子だった。


「誰かから噂でも聞いたの?守川さんとは何でもないよ…」


何でもないヤツと朝の電車で一緒に出勤するかよ。


しかも比奈は反対方向の電車だ。偶然一緒になったなんてある筈がない。


そう思ったけど、結局言葉は口に出なかった。


「ね。ヒロ……あたしたちもう一度やり直そう?」比奈はそう言って俺の腰に抱きついてきた。


忘れかけていた比奈の柔らかい感触。


それは周の引き締まった体の感触と、まるきり違うものだった。


女の子ってこんなに柔らかい生き物だっけ―――


そんな風に思って、


俺、ヤバいな……女の感触をすでに忘れかけている。


なんて顔をしかめた。