悠果里が事務所でショックを受けていた頃、公平は主演ドラマの撮影の真っ最中だった。


「カット!チェックオッケー。30分休憩にします。」


監督からカットがかけられると公平はセット裏にある公平専用のディレクターズチェアに腰かけ毛布をかぶって3秒もしないうちに眠りについてしまった。


この公平のディレクターズチェアは悠果里からの初めての誕生日プレゼントで4年間、どんな現場でもこれを使っているのだ。


眠っている公平を愛しそうに見つめる女がいた。


市川葵(いちかわ あおい)


公平の相手役の女優。


葵は悠果里の事務所の後輩で若手のなかでは人気、実力共にナンバーワンの有望株。


「熱愛報道で公平も疲れてるんだな〜。」


監督の藤田悦郎(ふじた えつろう)が爆睡する公平を見てボソッと言った。


「悠果里さんとのことですか?」

「葵ちゃんも知ってるのか。もはや業界では有名な話だけどな。笑」


藤田は笑いながら言った。


藤田が演出したドラマ共演がきっかけで付き合い出した二人。


「あの〜結婚とか考えてるんですかね?」


葵は恐る恐る聞いた。


「公平が?」


「はい。」


「こいつもいい年だし考えてるんじゃないの?」


「ですよね〜笑」


「公平のこと気になるとか?笑」


苦笑いで答える葵を見て藤田は冗談で聞いた。


「やだ監督!そんなことある訳ないですよ〜笑」


「ははは。笑 キスシーン増やして欲しかったらいつでも言ってくれ。笑」